畑で育てたジャガイモを掘り上げたら、皮にザラザラした斑点…。
それが「そうか病」です。
農薬で防ぐ方法もありますが、できれば自然な力で対策したいと考えていませんか?
実は、身近にある「米ぬか」を使うことで、そうか病の原因菌を抑え、土をジャガイモが好む弱酸性に整えることができるのです。
硫安や苦土石灰など他の資材との違いや、米ぬかを使う際に「腐る」「害虫が寄る」といった失敗を防ぐコツまで解説します。
この記事を読むことで、自然派でも安心して実践できるジャガイモのそうか病対策が分かり、来年はツルツルで美味しいイモを収穫できる未来が見えてきます。
さあ、ぬかを活かした家庭菜園の秘密を一緒に探っていきましょう。

- 米ぬかがジャガイモそうか病対策に効く理由
- 植え付け前に入れる最適なタイミングと量
- 腐敗や害虫を防ぐための米ぬか活用の注意点
- 硫安や苦土石灰との違いと品種選びのポイント
ジャガイモのそうか病対策にぬかを使う具体的な方法
ジャガイモ栽培の喜びを奪う憎きそうか病。
丹精込めて育てた苦労が水の泡になってしまうかのようですが、諦めるのはまだ早いです。
実は、私たちの身近にある「米ぬか」が、このそうか病対策に素晴らしい力を発揮してくれるかもしれません。
ここでは、農薬に頼らず自然の力を借りたいと願う家庭菜園愛好家のために、米ぬかを使いこなす秘訣を余すところなくお伝えしていきます。
- 土の中の善玉菌を増やし、そうか病菌の活動を抑える
- 土をジャガイモが好む弱酸性に傾ける
- 土壌の微生物バランスを整え、土本来の力を引き出す
このあとそれぞれのポイントについて詳しく説明していきますね。
米ぬかで土壌改善!そうか病を予防する仕組み
ジャガイモの皮がザラザラになる「そうか病」。
その原因は、土の中にひっそりと暮らす「放線菌」という微生物の一種です。
この菌は、乾燥してアルカリ性に傾いた土が大好き。
特にジャガイモがぐんぐん大きくなる初夏に活発になります。
ここに米ぬかを投入すると、土の中の世界は一変します。
善玉菌の応援団になる
お米の栄養がたっぷり詰まった米ぬかは、土の中の微生物たちにとって、ごちそうの山。
特に、そうか病菌と戦ってくれる「善玉菌」たちが、この栄養を糧に爆発的に増えるのです。
農研機構の研究でも、米ぬかの利用がそうか病の軽減に効果的であることが確認されています。
善玉菌が勢力を増せば、悪玉であるそうか病菌は肩身が狭くなり、活動が抑え込まれていくわけです。
土の酸度を調整する
さらに、米ぬかには土をほどよく酸性に傾ける力があります。
米ぬか自体が弱酸性な上に、土の中で分解が進むと「有機酸」という物質を生み出します。
ジャガイモはpH5.0〜6.0程度の弱酸性の土を好む一方、そうか病菌は酸性が苦手。
つまり、米ぬかはジャガイモにとって最高の住み心地を、病原菌にとっては居心地の悪い環境を作り出してくれるのです。



じゃがいもへの米ぬかの使い方と失敗しないコツ


米ぬかのパワーを畑で最大限に引き出すには、どうすれば良いのでしょうか?
家庭菜園でジャガイモに米ぬかを使うなら、植え付け前の土作り段階で、土にしっかり混ぜ込むのが鉄則です。
この一手間が、後々の収穫を大きく左右します。
基本のまき方
畑を耕す前に、地表に米ぬかを薄く均一にパラパラと撒きます。
雪をまくようなイメージですね。
その後、クワや耕運機で土と米ぬかをよ〜く混ぜ合わせましょう。
こうすることで、米ぬかが土の隅々まで行き渡り、カビの発生や発酵ムラを防げます。
失敗しないためのポイント
米ぬかは栄養豊富ですが、「多ければ多いほど良い」というわけではありません。
欲張って入れすぎると、急激な発酵で熱を出し、ジャガイモの根を傷めることがあります。
そして、米ぬかを混ぜ込んだらすぐに植え付けはせず、しばらく土を落ち着かせる時間を確保するのが成功の秘訣。
この間に微生物が働き、ジャガイモにとって最高のベッドを準備してくれますよ。



米ぬかを土に入れる最適なタイミングと量
前の見出しで触れた通り、米ぬかを使う上で最も大切なのが「タイミング」と「量」です。
ここで具体的な数字をしっかり確認しましょう。
最適なタイミングは「植え付け2〜3週間前」
米ぬかを土に施すベストタイミングは、ジャガイモの植え付けの2〜3週間前。
これは、米ぬかが土の中で微生物によって分解(発酵)される時間が必要だからです。
この期間に、土の微生物バランスが整い、栄養が植物の吸収しやすい形に変わっていきます。
植え付け直前に入れると、発酵熱やガスがタネイモに負担をかけてしまう可能性があるので注意しましょう。
守りたい適量
量については、1平方メートル(1㎡)あたり100~200g程度が目安です。
家庭菜園で言うなら、コップ2杯分くらいの米ぬかをパラパラと撒き、スコップで20~30cmくらいの深さまで、しっかりと土と混ぜ合わせればOK。
一カ所に固めず、まんべんなく撒き散らすことが大切です。
この「2〜3週間前」というのがポイントで、もし「うっかり植え付け直前になってしまった!」という場合は、無理に生の米ぬかを入れるのは避け、発酵済みの「ぼかし肥料」などを使う方が安全ですよ。
米ぬかは家庭菜園用として通販やホームセンターで手軽に購入できます。
もし手元になければ、人気の米ぬか商品一覧をチェックして、あなたの畑に合ったものを選んでみましょう。



じゃがいもの土寄せに米ぬかは使える?


栽培中盤、株元に土を寄せる「土寄せ」のタイミングで、「米ぬかを追肥に使えないかな?」と考えるかもしれませんね。
結論から言うと、「使えないことはないけれど、慎重に!」というのが正直なところです。
土寄せで使うリスク
生育中の株の根元に大量の米ぬかを入れてしまうと、発酵熱やガスが急激に発生して、デリケートな根を傷つけてしまう恐れがあります。
また、微生物が米ぬかの分解に集中するあまり、一時的に土の中の窒素分を奪い、ジャガイモが栄養不足になる「窒素飢餓」という状態になる可能性も。
さらに、未発酵の米ぬかは害虫を招きやすく、「ウジ虫がわいた!」なんて悲しい失敗談も耳にします。
使うなら上級者向け
総じて言えば、米ぬかはやはり植え付け前の土作りで使うのが基本。
土寄せ時に使うのは、もう少し上級者向けの応用技と言えるでしょう。
初心者の方は、まずは植え付け前にしっかり混ぜ込む方法から試すのが、トラブルを避ける一番の近道。
もし使うなら、ごく少量にするか、発酵済みの「ぼかし肥料」にしてくださいね。



じゃがいもが米ぬかで腐るのはなぜ?注意点を解説
「米ぬかを入れたのに、ジャガイモが腐っちゃった…」
そんな悲劇は避けたいもの。
米ぬか自体は良いものですが、使い方を間違えると腐敗の原因になることがあります。
発酵熱とガスの発生
大量の米ぬかを入れすぎると、土の中の温度が上がりすぎたり、有害なガスが発生したりすることがあります。
デリケートなタネイモや新しいジャガイモは、この熱やガスでダメージを受け、腐ってしまうのです。
植え付け2週間前までに施用するルールは、これを防ぐためなんですね。
一時的な窒素飢餓
微生物が米ぬかを分解する際、土の中の窒素を大量に消費します。
その結果、ジャガイモが成長に必要な窒素を横取りされ、栄養不足になることがあります。
株が弱ると病気への抵抗力も落ち、腐敗につながりやすくなります。
害虫の誘引
米ぬかを混ぜ残したり、入れすぎたりすると、その部分が腐敗してコバエ類の繁殖場所になることも。
幼虫であるウジ虫がタネイモを食い荒らし、腐らせてしまう可能性があります。
水はけの問題
有機物を入れると土がフカフカになりますが、雨の後に水が溜まりやすくなることも。
水はけが悪いとイモが腐る原因になるので、畝を高くするなどの対策も忘れずに行いましょう。



そもそもジャガイモのそうか病とは?他の予防策
ジャガイモの表面に現れる、あのザラザラとしたカサブタ状の斑点。
それが「そうか病」です。
一体どんな病気で、なぜ発生するのでしょうか?
この章では、そうか病の正体に迫りながら、米ぬか以外にも私たちにできる、畑とジャガイモが喜ぶさまざまな予防法を探っていきましょう。
- 原因は土の中に住む細菌の一種
- 高温・乾燥・アルカリ性の土壌で発生しやすい
- 皮を厚くむけば食べられる
- 土壌のpH調整や品種選びも有効な予防策
ここからは、これらの点について、一つずつ丁寧に解説していきます。
見た目でわかる!ジャガイモのそうか病の原因と症状


収穫したジャガイモの皮に現れる、茶色くザラザラした斑点。
まずはこの病気の正体を知ることから始めましょう。
原因は土の中の菌
そうか病の原因は、土の中に住む「ストレプトマイセス属」という種類の放線菌、つまり細菌の一種です。
この菌はジャガイモだけでなく、ダイコンやニンジンにも感染します。
特に、高温で乾燥し、アルカリ性に傾いた土壌で活発になり、同じ場所でジャガイモを作り続ける「連作」も菌が増える原因となります。
皮に現れるサイン
病気に感染したジャガイモの表面には、直径5~10mmくらいの茶色い円形の斑点がポツポツと現れます。
この斑点が盛り上がったり、クレーターのようにへこんだりするのが特徴です。
ひどくなると皮全体がひび割れ、ゴツゴツとした見た目になることも。
葉や茎には症状が出ないため、収穫するまで気づきにくいのが厄介な点です。



ジャガイモのそうか病は食べられる?皮の処理方法


収穫したジャガイモにそうか病の斑点を見つけたら、「これって食べられるの?」と不安になりますよね。
でも、ご安心ください!
食べても大丈夫な理由
結論から言うと、そうか病にかかったジャガイモは、ちゃんと食べられます。
そうか病菌は人間に有害な毒素を出すわけではなく、病斑も基本的にはイモの表面にとどまります。
病気の部分を取り除けば、中の部分は健康なジャガイモと味も栄養もほとんど変わりません。
上手な皮の処理方法
ポイントは「無理に皮ごと食べようとしないこと」。
ピーラーや包丁で、普段より少しだけ厚めに皮をむきましょう。
ゴツゴツしてむきにくい場合は、一度軽くゆでてからむくと楽になります。
小さな斑点は、スプーンの先などでその部分だけを削り取ってもOKです。
ポテトサラダやコロッケなど、加熱して潰す料理に使えば、見た目も全く気になりません。
適切に処理すれば美味しく活用できますから、過度に心配しないでくださいね。



ジャガイモのそうか病には硫安や苦土石灰は有効?
土作りでよく使われる「硫安」や「苦土石灰」。
ジャガイモ栽培では、この二つは全く異なる効果をもたらします。
味方になる「硫安」
硫安(硫酸アンモニウム)は、そうか病予防に役立つ味方です。
これは窒素肥料の一種で、土の中で分解されると土を酸性に傾ける性質があります。
そうか病菌は酸性の土が苦手なので、硫安を使うことで菌の増殖を抑え、病気の発生を減らす効果が期待できます。
「ジャガイモ専用肥料」に配合されていることも多いんですよ。
注意が必要な「苦土石灰」
一方で、苦土石灰(くどせっかい)は、基本的にそうか病を悪化させるリスクがあるため、使用には注意が必要です。
苦土石灰は土をアルカリ性に傾ける働きが強く、そうか病菌が活発になる環境を作ってしまいます。
「ジャガイモ栽培に苦土石灰はNG」と言われるのは、これが最大の理由です。
- 硫安はOK(土を酸性化)
- 苦土石灰は注意(土をアルカリ化)
この違いを覚えておくと、土作りがグッと楽になりますよ。
参考:茨城県農林水産部「輪作を主としたジャガイモそうか病の発病軽減効果」



農薬に頼らない!土壌pH調整による予防法
農薬に頼らず、環境にも優しい方法として、土壌のpH(酸度)を適切に調整することは、非常に効果的な予防策です。
ジャガイモが最も快適に育ち、そうか病菌が活動しにくい土壌pHは、5.0〜5.5程度の弱酸性とされています。
この範囲に土壌酸度を保つことができれば、そうか病の発生リスクを大きく下げられます。
酸度を下げるには?
もしご自身の畑のpHがアルカリ性に傾いている場合、次のような方法で調整できます。
- 酸度矯正資材を使う: 硫黄分を含む資材や硫酸鉄(フェロサンド)などが手軽です。
- 有機物を使う: ピートモスのような酸性の有機物を土にすき込むのも効果的。
- 肥料を選ぶ: 酸性肥料(アンモニア態窒素肥料など)を選びましょう。
自分の畑の状態を知るために、家庭菜園向けの土壌酸度計で一度測ってみるのがおすすめです。
pHをコントロールすることで、薬剤に頼らないそうか病対策が可能になります。
ただし、下げすぎにも注意し、適度な範囲を保つことが大切です。



そうか病に強いジャガイモの品種を選ぼう
土壌管理も大切ですが、実はもう一つ、とてもシンプルで効果的な予防策があります。
それは、最初から病気に強いジャガイモの品種を選ぶこと。
品種によってそうか病へのかかりやすさに差があるんですよ。
家庭菜園におすすめの品種
家庭菜園でよく育てられている人気品種の中にも、比較的抵抗性の高いものがあります。
例えば、「キタアカリ」は、初心者にも育てやすく、たくさん収穫できる上に、そうか病に比較的強いという特性を持っています。
さらに抵抗性の高い品種たち
近年開発された品種の中には、さらに高い耐病性を示すものも登場しています。
- ユキラシャ(抵抗性「強」)
- スノーマーチ(抵抗性「強」)
- スタークイーン(抵抗性「やや強」)
このように、品種選びを工夫するだけで、そうか病のリスクを植え付けの段階から大きく減らすことができます。
特に、連作になりがちな家庭菜園では、抵抗性品種を導入すれば、土作りと品種の両面から対策できるわけです。
もちろん、抵抗性品種でも基本的な土作りは重要ですが、毎年そうか病に悩まされている方は、一度品種を見直してみると新しい発見があるかもしれませんね。



ジャガイモのそうか病対策にぬかを使う方法まとめ
最後に、この記事の重要ポイントを振り返ってみましょう。
- そうか病対策には身近な「米ぬか」が有効。
- 米ぬかは土の中の善玉菌を増やし、そうか病菌を抑える。
- 土をジャガイモが好む弱酸性に傾ける効果も。
- 米ぬかを使う最適なタイミングは植え付けの2〜3週間前。
- 1平方メートルあたり100〜200gが適量。
- 米ぬかは土としっかり混ぜ込むことが失敗しないコツ。
- 入れすぎは発酵熱やガスで根を傷める原因に。
- 土寄せ時の米ぬか使用は上級者向けで注意が必要。
- そうか病のジャガイモは皮を厚めにむけば食べられる。
- 土壌のpHを5.0〜5.5の弱酸性に保つことが重要。
- 硫安は土を酸性化し、そうか病予防に有効。
- 苦土石灰は土をアルカリ化するため、使用は避けるべき。
- 「キタアカリ」など、そうか病に強い品種を選ぶのも効果的な対策。
米ぬかを使った自然な土作りで、今年はツルツルで美味しいジャガイモの収穫を目指しましょう!